2006年04月30日

トム・ジョビン・センターのこと(まとめ)

*ちょっとした記事なので2〜3日で訳し終えるつもりだったのですが、何日もかかってしまったので、改めてまとめて掲載することにします。グローボ・オンラインの4月17日の記事です。

トム・ジョビン・センター、マエストロのコレクションとともにリオでオープン

鳥の真似をしている男の口笛が録音で聴ける。本物の鳥の鳴き声ですぐに返事が返ってくる。最初の男は、この会話を録音した男でもあって、アントニオ・ブラジレイロ・ジョビン、あるいはトム・ジョビンとしてより多くの人に知られている。この音楽家が自然と親密な関係にあったことを明らかにしているこの音声は、大半は未発表のほかの9千の書類とともにコレクションの一部を構成していて、初めて公けに公開される。この資料は、ジャルヂン・ボタニコでこの月曜日に開業され、作曲家の個性を辿る一助となるトム・ジョビン・センターの大量のデジタルデータを構成している。この事業はジョビンの生誕80周年の日の一年前に実現する。

文書をコピーするために何年もの年月と110万ヘアウの投資が必要だったトム・ジョビン/文化・環境センターは、FAPERJ(リオデジャネイロ州研究援助基金)、ペトロブラス(国営石油公社)、ジャルヂン・ボタニコ、そして、音楽家パウロ・ジョビンと環境専門家ジョアン・アウグスト・フォルチスと名文家ビザ・ヴィアンナの司令部による援助を得ることができた。4つのコンピューターで見ることができるデジタルの全データを構成するために、トム・ジョビンによって保存されていた2万5千以上の書類は、メンテナンスされ、解凍され、スキャンされた。初めて公開される9千の選び抜かれたものは、さらなる収穫を意味している。

全体では、キャリアの中でも最重要の27のアルバム、この音楽家が作曲したり友人や鳥と対話したりしている様子が見られる100近くの自家録音、3000の写真、800の肉筆の原稿、700以上の楽譜とオリジナル・アレンジ、トムのレコーディングとインタヴューの76の映像、さらには下絵、覚え書き、書き付けなどの数百の書類……中には市販されているもののリストも含まれている……などがある。貴重なものの中には、ジョビンによって書かれた彼と音楽との関係を説明する手紙もある。“自分のことで思い出せるのは音楽が好きだということだ。僕の最初の記憶は僕を母が歌っていた子守唄に連れていく。それから路地と輪になって遊ぶ歌……。叔父がヴィオラォンを弾いていたのを思い出す。ショーロ、ワルツ、スペイン音楽、バッハなどが流れていた”と語られている。

このコレクションは創作の過程とマエストロの楽譜の整理における執念をも明らかにしている。ジョニー・アルフやカイミと作られたアレンジ、シンフォニー、「三月の水」「ヂサフィナード」「カンサォン・ド・アモール」(ママ)などの曲における音符がある。一度も録音されたことのない、今初めて公けに知られることになる曲の楽譜まである。1950年ごろに彼によって作曲されたショーロもある。「ヂサフィナード」の草案は彼の創作の典型である。ジョアン・ジルベルトによって1958年に78回転盤に録音されたこの古典の最初のいくつかのコードは、より以前の作曲の最初のいくつかのコードと同じである。

「父は自分の作品を永久に伝えなければならないという観念を持っていました。彼は書いた曲を手放すことにとても注意を払っていました。その曲がその形で存続してしまうわけですから」と長子でありこの場所の理事会の議長でもあるパウロ・ジョビンは語る。

トムの手で書かれた作曲作品とアレンジには、曲を書き表わす非常に独特の方法が表われている。ピアノのために要約された楽譜では、オーケストラ、ヴォーカル、その他の楽器を入れるべき部分に矢印が描かれている。いくつかのケースでは、ビニールテープで貼り付けられた歌詞が見られる。

楽譜へのアクセスと公開は浮き彫りにされるだけの価値がある。ブラジル交響楽団の指揮者で芸術監督で、ジョビン・シンフォニコのプロジェクトのコンサートも担当したホベルト・ミンチャックは、典型的で未発表の先進的事例だと格付けている。

「ファンタスティックです。ジョビンはブラジルが生んだ最大の文化遺産の一人です。国民が彼の作品にアクセスでき、子供にも検索できるのは重要なことです。ヴィラ・ロボスのたくさんのシンフォニーにもアクセスできず、著作権の膨大な金額を要求できる重要な作品の公開を作曲家の家族が困難にしているブラジルにおいて、モデルケースとなってくれるでしょう」と彼は賞賛する。

すでにオーディオには、ジャルヂン・ボタニコ地区の彼の家で、部屋(トムにスタジオと呼ばれていた)のピアノの上に置かれたカセットにプライヴェートに録音されたものがある。トムは音を、音階を、音色を試している。時には一人で、時にはシコ・ブアルキ、ミルトン・ナシメント、エドゥ・ロボといった仲間と。ジョビン・ファミリーとカイミ・ファミリーのリハーサルのホーム・ヴィデオもある。

「ピアノの上にカセットがあって、父は演奏か作曲をしながら電話をかけています。彼は「何」で電話しているのかを忘れてしまっています。ほかのことに気を取られて」と長子は回想している。

*この「センター」の話、「記念館ができるのかあ」くらいにしか考えていなかったのですが、トム・ジョビンの遺品が本格的に整理されて保存されることになったようで、大変喜ばしいことです。しかもデジタル化されてネットでもこれだけのものが視聴できるなんて。トム・ジョビンはインターネットの恩恵を本格的に受ける最初のアーティストなのかもしれません。そしてそれに足るだけの最後のアーティストなのかもしれません。

「センター」にも早く行ってみたいものです。講座のようなものもあるようで、早くも申し込みが殺到しているようです。そうだ、とりあえず僕の二冊の本を寄贈しなくては。

*4月23日までのアクセスが190177と、19万を超えていました。いつもご覧いただいてありがとうございます。

2006年04月23日

トム・ジョビン・センターとウェブサイトがスタート

リオのジャルヂン・ボタニコ(植物園)で「トム・ジョビン・センター」が業務を開始しました。どうやらまだ限定的な活動のようなのですが、併せて、トムの膨大な作品をウェブ上で公開するプロジェクトがスタートしました。以下、フォーリャ・ヂ・サンパウロの4月19日のリオ発の記事です。


トム・ジョビン・センターがマエストロの人生と作品をウェブ上で公開

一昨日のトム・ジョビン・センターの開業によって、パウロ・ジョビンは1994年に亡くなった父のすべての作品をデジタル化するための一歩を踏み出す。彼によると、その資料の最良の部分は今日からインターネットで見ることができる。www.antoniocarlosjobim.org.

「権利の問題があるので音声と映像はまだありません。それには何千もの手紙を送る必要があります」と、マエストロの長男で音楽家として彼の作品を整理して保存する責任を負っている55歳のパウロは語る。

また技術的な問題もある。パウロは五十以上の映像が視聴できるコンディションを探している。このサイトのサーバーは検索をサポートしていないからだ。

しかし音声と映像のパートは……プライヴェートなものがたくさんある……トムが愛したリオの場所の一つであるジャルヂン・ボタニコの中にあるトム・ジョビン・センターの本部に設置されている四つのコンピューターで利用できる。

そこではまた約八百の写真、数百の楽譜、書類、図案、作曲家の手書きの原稿も閲覧できる。

(中略)

コンピューターは同じくジャルヂン・ボタニコ内のトム・ジョビン・センターの限定的なカーザ(ホーム)で業務が開始される来週はオフになる。

建築家でもあるパウロは二ヶ月以内には新しくたくさんのものが利用できるようになると信じている。トムが生誕80年を迎える2007年までにはカーザはすでに充分に稼動しているはずである。

「ほかにも(建築家の)ルーシオ・コスタ、それからおそらく(劇作家の)マリオ・クララ・マシャード、あるいはインディオ・クレナク(*意味不明)などのたくさんの仕事が加わります」と彼は語る。

センターには環境と舞台を結びつける計画もある。環境学者のジョアン・フォルチスが協会の会長で、舞台装飾家のビザ・ヴィアンナが総監督、パウロは評議会の会長だ。今までに使われている百十万ヘアウの一部を寄付しているペトロブラスは、月曜日にさらに二百万ヘアウをセンターに投資することを発表している。


*感想などまた書きます。情報をいただいたMさん、どうもありがとうございました。

4月22日に聴いたレコード

*8時半起床。朝から机の前で仕事に取り掛かったのですが、何だか全然捗らない一日でした。まあ、こういう日もあるということで。

『イパネマの娘/ナラ・レオン』AB面

『ミステリオ ジョアン・ジルベルト・ライヴ』AB面

『オ・コンポヂトール・イ・オ・カントール/マルコス・ヴァーリ』AB面

『アイ・ラヴ・ブラジル/サラ・ヴォーン』AB面

『ソ・ダンソ・サンバ/アルナルド・エンリキ』

『セン・ヴォセ/マリア・ナザレス』

『クァンド・オ・カルナヴァル・シェガール/シコ、ナラ、ベターニャ』

『ボサ・ノヴァの贈りもの/ペリー・ヒベイロ』AB面

『30スセッソス・オリジナイス・エン・30・アノス・ヂ・ボサノヴァ』ABCD面

*AB面の表記があるものがLPで、ないものがCDです。
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2006年04月22日

『アローン・トゥゲザー』ジム・ホール ロン・カーター

四月になると聴きたくなるレコードです。もちろん個人的な思い入れなのですが。その昔アルバイトしていたジャズ喫茶で、レコード係としていちばん手を伸ばしやすい位置の棚にこのレコードがありました。それでよくターンテーブルに載せるようになりました。

僕が持っているLPはもうぼろぼろなのですが、一応、ジム・ホールとロン・カーターの二人からジャケットにサインをもらっています。あれはブルーノート東京でのデュオだったでしょうか? その茶目気あふれたサインをここではお見せできないのがちょっと残念です。

モダン・ジャズもずいぶんと聴きましたが、こういう演奏をいちばん好んでいるように思います。歴史的名演とか評論家が推薦するレコードではないのですが、夜中に目が覚めてふと聴きたくなるレコードです。高級な装置の大音量ではなく、我が家の貧弱なステレオセットの小さな音量で(相方を起こさないように)聴きたいと思うレコードです。

どの曲も懐かしいのですが、やはり、A面ラストの「四月の思い出」がベストです。
posted by naoki at 03:51| Comment(24) | TrackBack(0) | ウン・ポコ・ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月19日

『アライヂ・コスタ』

アライヂ・コスタのごく初期の録音を集めたこのCD(BMG Brasil - M60029)。LPで言うと『GOSTO DE VOCÊ』(1959)、『ALAÍDE CANTA SUAVEMENTE』(60)、『JÓIA MODERNA』(61)の三枚からセレクトされていますが、かなりの曲がシングル盤として発売された曲でもあります。ジョビン・ナンバーは六曲入っています。

中でも貴重なのは「メヂタサォン」。この曲だけはその三枚のLPには入っていなくて、トムの曲を4曲集めた45回転盤に入っていたものです。

このトラック、一説には59年、一説には60年の録音なのですが、仮に59年の録音だとすると、それは60年1月のジョアン・ジルベルトの吹き込みよりも前になります。この曲の初録音はイザウラ・ガルシアの59年のシングル盤なのですが、もしかしたらそれに次ぐ録音だったのかもしれません。

で、(拙著「愛と微笑みと花」にも書いたように)かなりコミカルに歌っていたイザウリーニャに対して、アライヂ・コスタはとてもまっすぐに歌っています。ヴィオラォンのスタイルが古いのと、パーカッションが勘違いしている(?)のが残念ですが、もしかしたら「メヂタサォン」という楽曲のイメージを決定づけたのは、アライヂ・コスタのこの歌唱だったのかもしれません。ピアノは、もしかするとトムでしょうか?

「メヂタサォン」以外にもこのCD、当時のトム・ジョビンの楽曲がどのように受け止められていたかが良くわかりますし、アライヂ・コスタが非常に洗練されたスタイルの持ち主だったことも良くわかります。一聴の価値のある貴重な録音です。

2006年04月18日

『ジョアン・ド・ヴァーリ』ジョアン・ド・ヴァーリ

ノルデスチのコンポーザーであるジョアン・ド・ヴァーリのその名も『ジョアン・ド・ヴァーリ』というアルバムにトム・ジョビンが参加しています。1981年の録音です。

トムが参加しているのは「Pé do lageiro(Aonde a onça mora)」という曲。すばしこくてコミカルな、ジョアン・ド・ヴァーリの曲です。トムは女性コーラスを従えて歌っています。この時期の彼がこのように他人のアルバムで他人の曲に参加することは極めて稀だったはずです。ジョアン・ド・ヴァーリに敬意を持っていたことの証しではないかと思います。

ジョアン・ド・ヴァーリはボサノヴァ・ファンにとってはナラ・レオンの「オピニオン」くらいしか接点がないですね(しかもあれはもちろんボサノヴァではない)。僕もほとんど聴かないです(すみません)。

しかしこういう重箱の隅的アルバムを紹介するようになってくると、この企画もそろそろ……ですかね。

参考

2006年04月17日

モーツァルトと素数の話

今日はまったく余談の話です。

今夜、スカイ・パーフェクト・TVで「レナードの朝」を放送していたので思わず観てしまいました。

僕は晶文社から出ているオリヴァー・サックスの著作は全部読んでいるのですが、たぶん「妻を帽子と間違えた男」だったと思いますけれど、その中に出てくる一つのエピソードが忘れられません。

それは、いわゆる知的障害の双子の兄弟が、六桁の数字を言い合うことでコミュニケーションをとっていたというできごとです。そして、オリヴァー・サックスがその数字を調べてみると、その数字がすべて素数だったというエピソードです。

この双子の兄弟はモーツァルトが異常なほど好きだったそうです。そしてオリヴァー・サックスは、この二人は数字を音楽のように、例えばトーンや図形のように知覚できたのではないかと言っていました。

僕はその文章を読んだ時にも思ったし、今でも思うのですが、まったく反対のことも言えるのではないかと思います。すなわち、音楽を聴くという行為は、数を数えるという行為なのだと。

そしてさらに言うと、人間は絶えず、無意識的に数を数えながら生きている動物であるように思います。

以上、かなりいい加減な話なので、あまり突っ込まないで下さいませ。
posted by naoki at 23:57| Comment(15) | TrackBack(1) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月16日

『シンプリー・ボサ』アドリアナ・リオス

これも勧められて買って聴きました。アルゼンチンの女性ヴォーカリストのボサノヴァ名曲集。これはなかなか好印象を持って聴きました。

先週紹介したアルバムとの違いは、(1)ヴォーカルの透明さ、(2)アレンジの簡潔さ、(3)取り組み方の真摯さ、といったところでしょうか? ヴォーカルはむしろこちらの方が「うまくはない」のですけれど。それでもこちらの方が好ましく思える辺りが、ボサノヴァの……そしてジョビン・ミュージックの……面白いところです。

彼女はアグスティン・ペレイラ・ルセナとも共演しているヴォーカリスト兼フルート奏者。十三曲中、トムの曲は九曲入っています。録音は2001年。このアルバムにはホベルト・メネスカルも参加しています。

参考

2006年04月15日

4月15日に聴いたレコード

*7時起床。朝からずっと来週の仕事のための草稿を書きながら音楽を流していました。

『アマゾナス/ファミリア・ジョビン』AB面

『ホジーニャ・ヂ・ヴァレンサ』(SOM LIVRE)

『クアルテート・ボサンバ』

『ソン/3』

『ジャック・ウィルソン・プレイズ・ブラジリアン・マンシーニ』AB面

『MJQウィズ・ポール・デズモンド』AB面

『キャノンボールズ・ボサノヴァ/キャノンボール・アダレイ』AB面

『人生は居酒屋/ベッチ・カルヴァーリョ』AB面

『褐色のサンバ/クララ・ヌネス』AB面

*午後から所用のため外出。夜わりと遅くなって帰宅。

『アライヂ・コスタ』(RCA録音のベスト)

『シンプリー・ボサ/アドリアナ・リオス』

『トム・ジョビン・ポル・マイーザ』

*AB面の表記があるものがLPで、ないものがCDです。

*今日の小さな発見
今日初めて認識したのだけれど、若き日のアライヂ・コスタが歌っているオスカル・カストロ・ネヴィスとルヴェルシ・フィオリーニのLágrimaという曲は良い曲だなあ。話題になっているのを聴いたことがないけれど、ほかに歌っている人はいるのでしょうか? どなたかご存知でしたらご教示ください(同名異曲もいくつかあるようですが)。
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2006年04月13日

『メウ』アナ・パウラ・ロペス

勧められて買って聴きました。2002年・2003年の録音。こういう新人女性ヴォーカルのボサノヴァ・アルバムは結構多いですね。

でもこれ、ちょっと特徴がないかなあ。正直、僕は面白くありませんでした。

彼女はサンパウロの出身のようです。十一曲中、トムの曲が五曲。あとはシコとかジャヴァンとかの曲が入っています。「三月の水」のアプローチはユニークですが……。声はそんなに嫌いではないのですが、アレンジが成功していないと思います。

ところで、フルアルバムで何曲入っていればトム・ジョビンのソングブックと認めて良いだろうと考えてみたのですが、五曲くらいでしょうかね。特に根拠はありません。このアルバムはぎりぎりセーフです。

参考1

参考2

2006年04月12日

『トリビュート・トゥ・アントニオ・カルロス・ジョビン』ヨーセイ・コーニング

オランダの女性歌手ヨーセイ・コーニングがドリ・カイミのプロデュースとアレンジを得て録音したトム・ジョビンのソングブック。トムの死のすぐあとに録音されたアルバムだけに、印象深い一枚です。

ブックレットで彼女はトムとの出会いについて書いています。彼女は1993年9月にオランダのTV局の番組の企画でトムに会いに行ったのだそうです。ブラジル音楽のCDを三枚録音しているのだと伝えると、トムはその中に自分の曲は含まれているのかと質問したそうです。彼女の答えは「ノン」。

そう答えなければならなかったことを恥ずかしく思った彼女は、帰国してトムのソングブックを録音することを決心、トムに共演を申し込みます。返事はオーケー。彼女は準備を始めます。

「でも、哀しくも、レパートリーとアレンジについて相談している最中、トム・ジョビンは1994年12月8日に亡くなりました」

そういうこともあって(たぶんそういうこともあって)、透明な哀感に包まれた美しいヴォーカルが全体を包んでいます。サポートもとても適確。静かなアルバムですが、良いアルバムです。トムの数あるソングブックの中でも上位に挙げたい一枚です。

参考

2006年04月11日

「ビタースイート」山本のりこ

山本のりこさんの『ビタースイート』という新譜を今掛けています。

リンダ・ロンシュタットが歌ったロイ・オービソンの「ブルー・バイユー」、スタイル・カウンシルの「マイ・エヴァー・チェンジング・ムーズ」、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」などをカヴァーした、我々の世代にはちょっとくすぐったい一枚です。懐かしいですね。かと思うと「三月の水」をニール・ヤング調(?)で歌っていて、にんまりさせられます。

のりこさんはちょっと歌い方が変わったように思いますが、こういう新しい試みにおいても、彼女の独特の世界はしっかりと維持されています。本人が言っていたように、ジャンルの垣根を取り払うような聴かれ方がされると良いなあと思います。
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2006年04月08日

4月8日に聴いたレコード

*昨日は一日名古屋に出張。桜はちょうど満開で見ごろでした。東京はもう八分くらい散ってしまっているのに。

*前にも書いたと思いますが、井の頭公園は桜が散った翌週がいちばん美しいです。淡い緑が一斉に吹き出す季節です。

*今朝は8時起床。以下、机の周りを片付けて、仕事をしながら(しかし身が入らない)。

『マチータ・ペレー/トム・ジョビン』AB面

『ブラームス ピアノ協奏曲第二番/ヴラディーミル・アシュケナージ ズービン・メータ指揮ロンドン交響楽団』AB面

『ドビュッシー ラ・メール イベリア/アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団』AB面

『バッハ・オルガン・リサイタル第一集/カール・リヒター』AB面

『プレイズ・デューク・エリントン/セロニアス・モンク』A面

『ア・サーテン・スマイル ア・サーテン・サドネス/アストラッド・ジルベルト&ワルター・ワンダレイ』A面

『雨に想いを/イーディー・ゴーメ』A面

『ア・トーダ・クーバ・レ・グスタ/アフロ・キューバン・オールスターズ』

『コモ・ヂジア・オ・ポエータ/ヴィニシウス マリリア・メダーリャ トッキーニョ』

*突然、雹が降る。

『コンストルサォン/シコ・ブアルキ』

『エドゥ&トム』

『エスペシャル・トム・ジョビン/ホーザ・パッソス ヴァーニア・バストス』

『イーリャ・ブラジル/ジョイス』

*夕食。

『ゴー/デクスター・ゴードン』A面

『ライヴ・アット・ザ・19th・モントルー・ジャズ・ファスティヴァル/ジョアン・ジルベルト』1枚目B面・2枚目A面

*AB面の表記があるものがLPで、ないものがCDです。

*この前ある方に、「LPを片面だけ聴くのは良くありませんよ。ちゃんとAB面通して聴くべきですよ」と言われました。それはそうだなと思ってなるべくそのように努めているのですが、長年の習慣は、どうしようもありませんね。僕のこれは20年前に吉祥寺の今はもうなくなってしまったジャズ喫茶のレコード係として身に付けたものです。

*しばらく確認していなかったのですが、4月1日までのアクセスが180070と、18万アクセスを超えていました。
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2006年04月06日

『ジョビンetc.』ヤシュミン・シャルネ・アベレル

このアルバムは良いです。とても好ましいです。

このヤシュミン・シャルネ・アベレルという歌手、リオで生まれ、ビリー・ブランコと出会ってインスパイアされ、DJなどもやりながらボサノヴァを歌っているようです。現在のベースはニューヨークシティ。

ピアノとギターとパーカッションというシンプルな編成をバックに歌っています。見るからに低予算のCDで、ほとんど自主制作盤のようなのですが、とても自然で、表情があって、チャーミングです。良い歌い手です。こういう人に活躍して欲しいものです。

十一曲中六曲がトム・ジョビンの曲。一曲挙げるとしたら、「ポル・カウザ・ヂ・ヴォセ」。絶対。ほかに「サボール・ア・ミ」などを歌っているところも僕の好みです。

あと、最近、「ソ・チーニャ・ヂ・セル・コン・ヴォセ」を歌う人が多くなったように感じるのは気のせいでしょうか?

参考

2006年04月05日

『ザ・ジョビン・ソングブック』マウーシャ・アヂネ

*今日は千葉の銚子のちょっと手前まで仕事で出かけてきました。春の雨の中を列車に揺られてトマス・H・クックのまだ読んでいなかった翻訳を読みながら。こういう時間は僕にはとても貴重です。

トム・ジョビンのバンダ・ノヴァに参加していたマウーシャ・アヂネのその名も『ザ・ジョビン・ソングブック』。2004年7月の録音です。

アルバムの裏面にトムの次のような言葉が印刷されています。「マウーシャと私はバンダ・ノヴァで世界を旅してきた。彼女はすばらしいシンガーだ。彼女の声は、深く、豊かで、ミステリアスだ。私にブラジルの森林を恋しくさせる。彼女は偉大なアーティストだ」と、絶賛しています。

でも正直に言って僕は彼女の声があまり好きではありません。トムがどうして彼女をそれほど気に入っていたのかがわからない。『ジョビン・シンフォニコ』でも彼女が歌っているシーンはちょっと辛かった印象があります。

ただ、このアルバムは聴いているうちに心地良くなってきて、最後まで楽しむことができました。おそらくアレンジ(兄のマリオ・アヂネが担当しています)が良いからではないかと思います。良くあるジャズ・コンボ・スタイルの編成で、別に変わったことをしているわけではないのですが。

中でも(月並みですが)、「シェガ・ヂ・サウダーヂ」「インセンサテス」「メヂタサォン」あたりが良いです。

参考

2006年04月04日

『Cais』 Ronald Bastos

 先週、中目黒の楽屋のsem voceのライヴに行った時に、相方との待ち合わせまでちょっと時間があったので商店街をぶらついていたら、中古レコード店がありました。ほとんどHIP HOPの品揃えで、僕などとは99%縁のない店だったのですが(店の方も僕のことを「変な奴が来たぞ」と思っている様子がうかがえました)、ワールドミュージックのコーナーに表題のCDがあったので買ってきました。以前からトムのディスコグラフィを眺めてはそのうちに手に入れようと思っていた1枚だったので。

 ホナルド・バストスが歌詞を書いている曲を、カエターノやシコやガルやミルトンなどが歌っているのですが、トム・ジョビンとバンダノヴァも参加して「O trem azul」を歌っています。1989年のアルバムです。

 トムの「O trem azul」と言えば遺作の『アントニオ・ブラジレイラ』での録音がもちろん有名ですが、その前にこのオムニバス盤での録音があったわけで、両者のトラックはまったく異なっています。第一にこちらはポルトガル語(『アントニオ・ブラジレイラ』では英語)。こちらの方がテンポはゆったりしているし、トムのヴォーカルその他が電子処理もそれほど施さない形で収録されているように思います。

http://cliquemusic.uol.com.br/artistas/artistas.asp?Status=DISCO&Nu_Disco=3727

2006年04月02日

訃報 ジャッキー・マクリーン

朝刊を広げて知ったのですが、ジャッキー・マクリーンが3月31日に亡くなったそうです。

好きなアルト吹きの一人でした。今日は仕事をしながら最近買ったボサノヴァのCDをまとめて聴こうと思っていたのですが、急遽予定を変更して、ジャッキー・マクリーンのLPをまとめて聴いています。『4,5 and 6』のジャケットにもらったサインを眺めながら。

ブルーノート東京で、ステージに出る時もひっこむ時も、最前列に座っていた僕の肩に手をついて上り下りした彼を思い出します。

*追記

今日聴いた音楽 ジャッキー・マクリーン追悼特集

*以下、すべてLPです。『レフト・アローン』を除いてAB面通して聴きました。

『4、5&6』

『スウィング・スワング・スウィンギン』

『クール・ストラッティン』(ソニー・クラーク)

『ジャッキー・マクリーン・クインテット』(ジュビリー盤)

『ニュー・ワイン・イン・オールド・ボトルズ』(ウィズ・ザ・グレイト・ジャズ・トリオ)

『ジャッキー・マクリーン・クインテット』(ブルーノート盤)

『リー・ウェイ』(リー・モーガン)

『ア・ロング・ドリンク・オヴ・ザ・ブルース』

『レフト・アローン』(マル・ウォルドロン)

『ライヴ・アット・モンマルトル』

『シェイズ・オヴ・レッド』(フレディ・レッド)

『キャプチャー・スウィング』

『ライク・オールド・タイムス』(マル・ウォルドロン&ジャッキー・マクリーン)

これくらい聴けば供養になるでしょうか? ジャッキー・マクリーンのご冥福を心からお祈りします。

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2006年04月01日

「Sem Voce」のライヴ

昨夜は東京・中目黒「楽屋」でジョビン・トリビュート・ライヴ「Sem Voce」のライヴ。場内満席の大盛況でした。

スティーヴ・サックスさんのアレンジはどちらかと言うとオーソドックスでシンプルですが、楽曲の美しさと各人の持ち味を充分に引き出していて、とても効果的です。絶妙のアンサンブとグルーヴを堪能させていただきました。

選曲も、“新曲”の「フォーエヴァー・グリーン」を始め(山本のりこさんはこの曲をとても気に入っているそうです)、「ショーロ」、「ディアローゴ」、「ポル・トーダ・ア・ミーニャ・ヴィーダ」、「ジャネラス・アベルタス」、「レッド・ブラウス」など、とても渋かったのですが、どなたかがおっしゃっていたように、「こういう「超有名曲以外の曲」がジョビンは良いんだよね」という意見に賛成です。とても貴重なこの試み、ぜひとも長く続けていただきたいと思います。

あと、この夜のMVPは、ピアノの二村希一さんに! それと、「この一曲」は、ラストの「デイ・トリッパー」に!(詳細は私の口からは伏せておきます)

さて、会場でお会いした皆さん、どうもありがとうございました。クリントンさん、バンマスさん、えんたつさん、unsrdstさん、尾崎さん(以上、年齢順)、お話しさせていただいて楽しかったです。先に失礼して申し訳ありませんでした。皆さんご無事に帰還していらっしゃるでしょうか?(笑)

ジョビンを愛する演奏者のすばらしい音楽と、ジョビンを愛するオーディエンスとの楽しい語らい。演奏中にふと、今日のこの場は「見守られている」だろうなあと思いました。忘れられない素敵な夜になりました。
posted by naoki at 10:34| Comment(21) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする