2008年10月26日

ジョアン・ジルベルトの公演が延期

11月01日(土)の公演が12月13日(土)に、11月02日(日)の公演が12月14日(日)に延期、11月03日(月・祝)の横浜公演は中止とのことです。

風邪でも引いたのでしょうか? 軽度であることを祈ります。

posted by naoki at 14:12| ジョアン・ジルベルト来日公演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月15日

青山でブラジル(+ラグビー)

昨日13日(月・祝)は東京青山で、(1)ラグビー・トップリーグ@秩父宮ラグビー場→(2)ムッシュかまやつトークショー「ムッシュが語るボサノヴァ」(青山でボサノヴァ。)@オラクル青山センター→(3)山本のりこさんライヴ(同)@avex本社前→(4)「カルトーラ サンビスタの物語」(ブラジル映画祭2008)@表参道ヒルズ→(5)ムケッカその他@某店というフルコース。青山が毎週こんな風だったら良いのになあと。

かまやつひろしさんがトム・ジョビンの音楽について語っていたことのメモ。
「ジョビンの音楽を聴いていると、まるで一枚の絵のように感じるよね。その中にジョビン自身の歌が時々入ってくるんだけど、それがまるでその絵の中に飛んでいる鳥のようでね。こうでなくちゃいけないと学んだものだよ。歌というのは鳥で良いんだな、自分だけ出っ張っちゃいけないんだなってね」。
音楽のジャンルに関係なく、長らく音楽を演ったり聴いたりしている人の話には、できるだけ耳を傾けるべきだと思います。

あとはカルトーラの映画が最高でした。会場が満員になったのには驚きましたが、聞くところによると連日こうだったそうです。旧知・新知の顔が多いことも驚き。何かを投げれば知り合いに当たる感じでした。

さて、最近アクセスがちょっと増えているのですが、「ジョアン・ジルベルト」で検索して来られる方が多いようです。気が付けばもう1カ月を切っています。このブログもそろそろジョアン・モードに切り替えることにしようかと思います。と言っても過去のネタしかないのですが。
posted by naoki at 02:13| Comment(2) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月13日

10月12日に聴いたレコード

*金木犀が最後の芳香を放つ、秋のど真ん中の一日。午前中は快晴。午後はパリのような曇り空。

起床。入浴。洗濯。

『エラ・エ・カリオカ/ジョアン・ジルベルト』AB面

掃除。

『ヒア・アンド・ナウ/ハンプトン・ホウズ・トリオ』AB面

『シコ・ブアルキ・ヂ・オランダVol.3』AB面

仕事。

『カーダ・クアル・メリョール/ルイス・エサ&アストール』

『ジャルヂン・アバンドナード/セルジオ&オダイル・アサド』

『カミーニョ/ヴァルテル・サントス』AB面

『バッハ プレリュードとフーガ/ジョン・ルイス』AB面

『ヂアゴナル/ジョニー・アルフ』

『クラウド・ライン・ブルー/カーリン・クローグ&ジョン・サーマン』

散歩。買物。仕事。

『ブルー・ヘイズ/マイルス・デイヴィス』A面

『夜のガスパール(ラヴェル名演集)/マルタ・アルゲリッチ』AB面

料理。

『ブラジリアンス!/マルコス・ヴァーリ』

夕食(渾身の麻婆豆腐)。

『パラディーゾ/セルソ・フォンセカ&ロナルド・バストス』

仕事。

『愛の如く/アン・バートン』

『シー・ウォズ・グッド・トゥ・ミー/チェット・ベイカー』AB面

*AB面の表記があるものがLPで、ないものがCDです。
posted by naoki at 02:17| Comment(6) | TrackBack(0) | 今日聴いた音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月06日

ANTONIO BRASILEIRO(6)

前回紹介したブックレットの文章で、監督のロベルト・タルマが多大な「愛と情」を注ぎ込んでこの作品を作り上げたことが良くわかりました。20年前の製作だし、1時間の番組なので限界はありますが、60歳のトム・ジョビンの「今」を捉えたと言える内容の映像だと思います。結果として「ボサノヴァ」の「ボ」の字も出てこないところがユニークで、ヴィラ・ロボスとカルロス・ドゥルモンド・ヂ・アンドラーヂへのオマージュを引き出そうとしたあたりに、この番組の真骨頂があると思います。

でも前半のニューヨークの「漸新世(oligoceno)」だの「ウルブ」だのという場面は、大半の音楽ファンには退屈だと思います(僕は少しでもトム・ジョビンの心境に迫りたいと考えているので、その部分もとても興味深く観ましたが)。それでも、「トゥー・カイツ」が「おそるおそるの接近abordagem cuidadosa」の歌だと述べるところなど、新たな発見もありました。

中盤の演奏シーンでは、シコとエドゥと「ショーロ・バンヂード」を歌うところがいちばん感慨深いです。それから「リジア」の最後にマリーナ・リマに言っている言葉も記憶しておきたいです。

終盤の部分では、ソニア・ブラーガの発言が非常に好ましいです。それからゲッツが出てくるところでは、80年代にもトムとゲッツが互いに敬意を持って接することのできる関係であったことが証明されています。先日も知人たちと『ゲッツ/ジルベルト』録音時のジョアンとゲッツの衝突は本当か?という話になりましたが、あの当時のエピソードはやはりかなり誇張して伝えられている面があるのではないかと思わせる場面でした。

なお、「カンシオネイロ・ジョビン」では、この番組にはソニア・ブラーガとフランク・シナトラが出演してインタヴューを受けると書かれていたので、僕も『三月の水』の中でそのように紹介してしまったのですが、シナトラではなくてゲッツだったのですね。あの部分は誤りでした。ここに訂正します。

それに関連して言うと、最後の字幕でミッシェル・ルグランに対して謝意が述べられているのに、ルグランに関連する場面がないのはどういうことなのでしょう? もしかしてどこかに出演していたのに、今回のDVDに収録できずにカットされてしまったのでしょうか? 少しだけ気になります。

さて、何と言っても貴重なのはボーナス・トラックのマリガンとトムの場面です。インタヴューの中では、トムがボサノヴァを「愛の音楽」と説明しようとしているところ、マリガンがボサノヴァの「クール」に注目しているところが興味深いです。

でもそれよりも何よりも、マリガンほどの大物が「ワン・ノート・サンバ」のラストに手こずるところが面白いです。そして、マリガンがその部分のコツを掴むところで、「裏のフレイズを演奏している」と言い掛けて表情が変わるところに、ボサノヴァとモダンジャズの本質的な違いが見え隠れしているように思います。

ともあれ、僕もいくつかのシーンは観たことがあったのですが、完全な形で発売してくれないかなとずっと思っていた番組で、全体を通して視聴したのは今回が初めてです。今後もトム・ジョビンの映像資料の発掘に大いに期待したいです。

2008年10月05日

ANTONIO BRASILEIRO(5)

それでは続いて、DVDのブックレットに掲載されているこの映像の監督、ロベルト・タルマの文章を紹介します。

トムを救おう。

私がトム・ジョビンを発見したのは13歳の時だった。そのメロディ、その詩、そのイメージ、その素敵な風味を。「アントニオ・ブラジレイロ」を作る際に、私は夢に見た自分の人生を通り過ぎた。

トムに対する情熱の時期は他に比べるものがないもので、実際に今日まで続いている。私がその要求を申し出た時、ボニとダニエルはただ私にいつ準備が整うのかと訊ねただけだった。それが良いことだという確信は議論されることなく、ただ実行された。ネルソン・モッタ、エウクリデス・マリーニョ、グレイゼール、私は、愛されているマエストロとたくさんの会話をした。そしてたくさんの愛と情を込めてこの仕事を実行した。

トムを再現できることによって、まだ見ていなかった人が熱烈に好きになるであろうことを、すでに観ていた人はサウダーヂをちょっとだけ抑えるであろうことを、私は確信する。

ロベルト・タルマ

アントニオ・カルロス・ジョビンについて語る時、人はなぜかくも詩人になるのか……に1ページを刻む名文だと思います。

*あともう一度全体の感想を述べてこの項を終わりにします。

2008年10月04日

ANTONIO BRASILEIRO(4)

本編は前回紹介したところで終了ですが、注目はボーナス・トラックです。トム・ジョビンとジェリー・マリガンの、おそらくは1964〜66年ごろのモノクロの映像が収録されています。これは、以前に何かのDVDに一部が収録されていたと思いますが、今回ここに収められているのがおそらく残されている全貌だと思います。

トムはピアノの前に座っていて、トムと向かい合う位置にマリガンがいます。まずはインタヴュアーがトムにこう言います。「ボサノヴァは音楽だけに留まらず、すでにアメリカ合衆国でとても大きな衝撃を創り出しています。あなたはそれを好ましいと思いますか?」。
トムは次のように答えます。
「好ましくもあり、好ましくなくもあります。なぜならそこには大きな商業的な波があるからです。それと同じことはリオでも起こりました。初めのころはボサノヴァは非商業的音楽と考えられていました。誰もボサノヴァを録音しようとしませんでした。でもボサノヴァが売れると、皆がボサノヴァを録音するようになりました。それから物事はちょっと……商業化しましたcomercializado。どう言えば良いのかわからないのですが」。マリガンが「売り払ったんだね」と言葉を補います。
トムは言葉を続けます。「そしてそこ(ブラジル)でも同じ現象がありました。それが今ここ(米国)で起こっていることだと思います。その時現われたのは、ボサノヴァ冷蔵庫、ボサノヴァ洗濯機、ボサノヴァ弁護士……」。マリガン爆笑。「たくさんありました」とトム。「そして今、こちら(米国)でラジオを聴いていると、ボサノヴァ櫛、ボサノヴァ靴、それは音楽にとって必ずしも良いことではありません」。

インタヴュアーが次の問いを投げ掛けます。「これは新しい哲学であり、生き方であるとあなたが言う時、それは何を意味しているのですか?」。
この質問にまずはマリガンが答えます。「それは多くの国で実際に起こっていることだよ。もし正確に言うとすれば……」。トムが「イエス」と相の手を打って、マリガンは、「『クール』なものごと、若者たちの行動と一致する……我々が40年代と50年代の初めにアメリカで実際に通り過ぎて来たことさ。それからそれは突破口を開いて、もう一度反動が起こったんだ。それは非反動なんだよ」と言います。さすがはクールの権威マリガンです。トムは、「そう、それです」と頷きます。
そしてマリガンが面白い喩えをします。「それはマーロン・ブランドが演技で示した態度のようなものだ。彼は無表情だった。自分が感じていることを決して表に出さなかった。でも人々には彼が心の内側で感じていることがわかったんだ」。
トムが後を継いで、「そうです。そして彼の感受性を感じたのです」。
マリガンは「だね」と頷きます。そして、「でも、君がそれは哲学を表現していると言う時、私はそれが君が本当に言いたかったことだとは思わない。君はブラジルで直ちに巻き込まれた人々について話したよね」。トムが「イエス」と言うと、マリガンは「でももう一つの種類の哲学がある。音楽で表現される哲学だ。そしてそれは本当にさらに……」と言います。このあとをトムが引き取って、「愛を込めて」と言います。
マリガン「うん。でも人々は無表情にミスリードされる」。
トム「イエス。でも愛は、たくさんの愛が、実は隠されている。でも、実演するのは『クール』なんです」。

マリガンは「君は英語の歌詞も書いているね。ブラジルにいるアメリカ人の友人からずいぶん助けてもらったと聞いている。『ワン・ノート・サンバ』では」と言います。
トムは「南米に住んでいる全北米人が私を助けてくれました」。
マリガンは「どうやるのかな?」。
こうして「ワン・ノート・サンバ」を二人で演奏することになります。
トムは演奏の前に、「この曲のオリジナルが意味しているのは、『いくらかは(more or less)』です」と言います。
そしてトムはピアノを弾きながら「ワン・ノート・サンバ」を、すなわち英語の歌詞を歌い始めます。ワンコーラス目が終わると間奏からマリガンがクラリネットで入ります。トムがハーモニーを付けます。けれども最後は何となくぼんやりと終わってしまいます。

トムは「グッド、ジェリー」と言いますが、マリガンはさすがに満足せずに、「最後のフレイズを普通にプレイしてしまった。最後のはとても難しいフレイズだ」と言います。トムは「そうなんです」と言います。
もう一度最後の部分を二人で演奏しますが、マリガンはうまく吹けません。最後のフレイズを掴んでいません。
トムが「私にとってはジャズのフレイズもとても難しいですよ」と言うと、マリガンは「そう言ってくれてありがとう」と苦笑します。トムは「いや本当ですよ」と言います。
マリガンは「リズムセクションが聴ければなあ。リズムセクションは八分音符をプレイするからね」。
マリガンが口の中でチコチコとドラムのシンバルの音を口ずさむと、トムがそれを受けて、チコチコと口の中で言いながらピアノを弾きます。しかしマリガンはまた失敗。「私は裏のフレイズを演奏しているんだ。なぜなら」と言い掛けて、その時何かを掴んだような表情をします。そしてトムに、「もう一度いこう」と言います。
そしてようやく二人の息が合ったエンディングに成功します。さらにもう一度。トムは「グッド、ジェリー、パーフェクト」と言います。
マリガンはもう一度、間奏の部分から気持ち良さそうに吹き始めます。最後はちゃんと決まって、トム「やったね」。マリガン「やったね」。

最後のクレジットを見ると、このボーナストラックの部分はカーネギーホールのマリガンを記録した映像の一部に収められていたようです。

*続く。

2008年10月03日

ANTONIO BRASILEIRO(3)

「ショーロ・バンヂード」が終わると、パウロのヴィオラォンとジャキスのチェロをバックに、パウラ・モレンバウムが「ブラジル風バッハ第五番」のアリアを歌い始めます。トムがヴィラ・ロボスへの思いを語ります。
「ヴィラ・ロボスのサウダーヂと言ったら。彼は導師guruだ。マエストロmestreだ。マスターmasterだ」。一瞬だけヴィラ・ロボスが演奏と指揮をしている映像も流れます。

トムは彼のもう一人の導師であるカルロス・ドゥルモンド・ヂ・アンドラーヂの詩の一節を朗読します。そしてこう語ります。
「僕は『僕たちの最大の詩人』と言うことはできない。なぜならそういうことは世界中が言っているからだ。『僕たちの最大の詩人』とね。それで僕はこう言いたい。『どんなにすばらしいことだろうか。カルロス・ドゥルモンド・ヂ・アンドラーヂの友人でいるということは』」。
そしてトムはカルロス・ドゥルモンド・ヂ・アンドラーヂの詩を朗読します。場面はいつの間にかリオのジャルヂン・ボタニコです。詩は「挽歌(エレジー)Elegia」(抜粋)。読み終えてトムは「カルロスにキスを、ね」と言います。

すると今度は「トムにキスを」という字幕が出て、カエターノ・ヴェローゾがヴィオラォンを弾きながら「あなたを愛してしまう」を歌います。

続いてはトムが「べベル」を歌い始めます。再びバンダ・ノヴァの演奏です。前回紹介したいくつかの演奏と同様のスタジオもしくはステージで収録されている映像です。

それから「ルイーザ」が流れます。映像はおそらくこの曲がテーマとして採用されたソープオペラ「ブリリャンチ」からの映像です。アレンジもオリジナルのサウンドトラックのものです。

その曲が終わるとニューヨークにいるソニア・ブラーガが歩きながらインタヴューを受けるシーン。彼女はこう語ります。
「私が思うにトムはすべての女性の夢なの。でもすべての男性の夢でもあるのね。なぜなら彼は男性的でもあり女性的でもあるから。彼はすべてなの。ほとんど完璧な組み合わせ。その上、彼の音楽は、とても複雑なものになりそうなのに、でも、彼はその複雑を単純にする人なのね。彼は、思考して、あなたに一つの言葉を提示する哲学者のようだわ。情熱を、愛を、将来を。ブラジルに戻ることを、遠くにいることを、近くにいることを。それがジョビンよ」。

すると今度はスタン・ゲッツが現われて、隣に座っているトムに向かってこう語ります。二人ともワイングラスを持っています。
「20世紀前半には偉大な作曲家が何人もいた。ガーシュウィン兄弟、ジェローム・カーン、ハロルド・アーレン、コール・ポーター……」。ここでトムが「バーリン」と助け船を出して、ゲッツは続けます。「アーヴィング・バーリン。でも20世紀後半には、これは私の見解だが、3人だね。究極の美と天才は。その一人がジョビンだ」。トムは帽子を脱ぐ真似をします。

続いてインストゥルメンタルの「もし皆があなたと同じだったら」。『テラ・ブラジリス』に入っているマルシャふうのアレンジです。映像はブラジルの街の人々の表情です。
途中からトムのカルロス・ドゥルモンド・ヂ・アンドラーヂの詩の朗読が被さります。詩は「必要の詩Poema do Necessidade」です。

ラストは「ボルゼギン」。トムがピアノの前に座って、スティルのアニメーションと共演します。プロモーションヴィデオふうのつくりです。

この曲が終わると、クレジットが流れ始めます。

*続く。

2008年10月02日

ANTONIO BRASILEIRO(2)

ウルブの話のあとは演奏シーンです。

まずはバンダ・ノヴァの「ジェット機のサンバ」。トムは紺のジャケットを着ていて、リラックスしてピアノを弾いています。バンドは、ジャキス・モレンバウム、チアォン・ネット、パウロ・ブラーガ、パウロ・ジョビンという不動のメンバーに、コーラスは左から、アナ、パウラ、エリゼッチ、マウーシャ、シモーニ。時折映し出されるリオの空からの風景は、来日時にNHKで放映されたライヴに挿入されていた映像とまったく同じような気がしますが……。

次はピアノを弾くトムの隣にマリーナ・リマが座って、トムにしな垂れ掛かりながら「リジア」を歌います。ところどころトムもハーモニーを付けて、一部はヴォーカルも取ります。若くて美しい女性を相手にした時のトムの張り切りようは今さら言うまでもありません。おまけにエンディングにマリーナに囁きます。「この歌は車の流れに消えていく。レボウサスrebouçasトンネルの入口にこうして……。スモッグが熱気に立ち上って……」。そしてキス。トムは「僕はマリーナを思いながら……」と付け加えて、マリーナがうふふと笑います。この曲のシチュエイションを地でいくような展開にちょっと胸がきゅんとなります。

続いてジョイスが「インセンサテス」を歌います。ピアノはトムではなくてジルソン・ペランツェッタ。トムは二人の前に座ってジョイスが歌うのを見守っています。その感じがちょっと不自然で不思議です。ラストにジルソンがピアノで「ボニータ」を仄めかして、ジョイスが「ボニータ」と歌うと、トムもハーモニーを付けます。

このあとガル・コスタがトムのピアノの脇に凭れて「ヂンヂ」を歌います。これは過去に紹介したDVDのどこかに収められていた映像です。

次のシーンはおそらくトムの自宅で、ピアノのトムの隣にシコ・ブアルキ。二人は「黄金の歳月」のリハーサルをしています。トムは「acidenteが知りたいかい?」と言ってこの曲のイントロを、メリハリを付けて、一部を強いアタックで弾いて、「ショックアブソーバーさ」などと言っています。それからこの曲の歌い出しの部分について、「写真には誰も写っていない。でもそれを見たなんて、馬鹿みたいだ(parece ridícul)。ね、わかるだろう? 僕は、君が言う通りだ(parece que dizes)と作らなくちゃいけなかった。だって」と言ったところで場面が変わって本番シーン。前の4曲と同じようなスタジオあるいはステージ(観客はいない)のようなところで、トムのピアノの横でシコが「黄金の歳月」を歌います。途中で挿入されるシーンはジルベルト・ブラーガの同名のドラマのシーンだと思います。

続いてはスタジオのようなところで今度はエドゥ・ロボとリハーサル。エドゥはヴィオラォンを抱えていて、トムはピアノの前に座っています。エドゥがトムの顔を見て歌い始めようとしますが、トムははぐらかして、自分は始めるふりをしたんだ、マエストロは良くこういうことをするんだ、などと言って、デイヴ・グルーシンから聞いたチェコのマエストロのカリフォルニアのコンサートの逸話を、立ち上がってジェスチャーをまじえてふざけながら説明します。このあと場面が前の5曲と同様の場面に戻って、トムのピアノにエドゥがヴィオラォンを弾きながら「ショーロ・バンヂード」を歌い始めます。ピアノの傍らにはシコもいて、トム、エドゥ、シコの3人の歌声が重なっていきます。

*続く。

2008年10月01日

ANTONIO BRASILEIRO(1)

1987年のTVグローボの特別番組「アントニオ・ブラジレイロ」がジョビン・ビスコイトフィーノからDVDとして発売されました。トム・ジョビンの還暦を記念して作られた番組で、ニューヨークとリオで録画されています。そのうちのいくつかの場面はこれまでにもいろいろなDVDにちょこちょこと収められていましたが、まとまった形での発売は初めてです。監督はロベルト・タルマ。この場で内容を少しずつ紹介していこうと思います。

最初の場面はニューヨークの国立歴史博物館。動物の剥製(模型?)が次々に映って、「サウダーヂ・ド・ブラジル」が流れて、トムのナレーションが重なります。
「漸新世(oligoceno)の後期、中央アメリカはずっと水の中に沈んでいた。何千年もそのままだった。水没していたんだ。水は中央アメリカを覆っていて、動物たちが行き来するのを阻んでいた。北半球から南半球へとね。それで南米には、ブラジルには、大きな哺乳動物がいないという特性が与えられたんだ。ブラジルの大きな哺乳動物は僕たちみたいに輸入されてきたものだ。バッファロー、コブウシ、牛。だからブラジルの動物区系はオーストラリアの動物区系に似ているんだ。島の動物区系なんだよ。巨大な島のね。それと鳥が豊富なんだ。ブラジルは世界で最も鳥の種類が多い国だ。その動物区系には泳ぐのも飛ぶのもよじ登るのもすべて存在する」。
ゴリラの剥製が映ったかと思うと、そのポーズを真似しているトムが映って、それからタイトルバック。映像はブラジルの動物たちです。

次の場面はニューヨークのセントラルパーク。「セントラルパーク、ノヴァヨーキ、プリマヴェーラ・ヂ・1987」というナレーションが読み上げられますが、担当はアロイージオ・ヂ・オリヴェイラです。続いて「花の中のトムと木々」というナレーションが流れるのですが、トムはトレンチコートと帽子とマフラーで完全防寒していて、まだ寒そうです。
公園を歩くトムの映像に、トムの声が流れます。
「うん、母が僕に言ったんだ。いい? もしあなたにとって良いことなら、トム、あなたはブラジルを出なさい。そしてアメリカ合衆国に行きなさい」。
ヴィオラォンを抱えてベンチに座ったトムは「これきれいだろ?」と言って、フランシスコ・アルヴィスの「ア・ヴォス・ド・ヴィオラォン」をちょっとだけ歌います。インタヴュアーが「あなたは音程は確かなのに、どうして『ヂサフィナード』を作ったんですか?」と質問。トムは、「僕はスペシャリストじゃないある男を弁護するためにこの曲を作ったんだ」と言って、「ヂサフィナード」を一節歌います。そして、「で、ジョアン・ジルベルトが録音した。最後はこうだった」と言って、最後の音をはずしたパターンを歌います。インタヴュアーが「完全に不協和音(dissonante)ですね」と言うと、トムは「僕がこれを作ったら、ジョアン・ジルベルトは言った。『僕はそれは録音しないよ。僕は自殺者じゃないからね』」。

このあと「トゥー・カイツ」が流れて、セントラルパークを歩くトム。運動をしている女性に話し掛けてふざけています。そして、車の中でインタヴュアーが「『トゥー・カイツ』は、接近abordagemですか?」と訊ねると、トムはこう答えます。「接近だけど……彼が感じた……おそるおそるのcuidadosaだね」。
さらに移動中の車の中で、
「フェルナンド・サビーノが言っていた。ニューヨークは担架から見るための都市だって。担架で動けばここではすべてが見えるって」。
「アストラッド・ジルベルトがここに住んでいた」。
「おお、あれ美しいね」と観光用の馬車の馬を指差して、「イパネマにはもうないなあ」。

ニューヨークの夜景のあとは、ニューヨークの国立歴史博物館に戻って、「サウダーヂ・ド・ブラジル」が流れます。トムが赤い頭のウルブの剥製の前で説明します。
「これが僕らのジェレーバjerebaだ。カミランガcamirangaだ。このウルブには特別な性質がある。彼は、この目立つ鼻の孔が見えるね、彼はにおいを嗅ぎ取るんだ。そして毒見をするんだよ。においを嗅ぎ取るんだ。彼が食べたものはほかの動物も食べる。もし彼が触らなければ、例えば、それが死んだ動物でも、毒に毒されて死んだからで、彼が触らなかった動物は誰も触れないんだ」。
「ウルブは寒いのが好きじゃないし、雨が好きじゃない。好天が好きなんだね。ウルブはアラスカからパタゴニアまで行く。ブラジルを経由してね。人間はジェレーバを利用できるよ。くっついて行けばブラジルまでヒッチハイクできる」。

*続く。

posted by naoki at 03:20 | TrackBack(0) | トム・ジョビン・没後10年 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする