2010年01月23日

たった一つのボサのナラ

昨日(1月21日)西荻窪 Aparecidaで堀内隆志さんと荒井めぐみさんによる『ナラ・レオン 美しきボサノヴァのミューズの真実』出版記念トークショーがありました。

今回の『ナラ・レオン 美しきボサノヴァのミューズの真実』の発行(2009年12月11日発行)は快挙と言うしかありません。監修の堀内さん、翻訳の荒井さん、版元のブルース・インターアクションズのご尽力に脱帽します。堀内さんに至っては8年越しの思いが叶ったということで、本当に良かったです。おめでとうございます。

昨夜のトークショーは、セルジオ・カブラルのこのテキストに沿って、ナラ・レオンの生涯を数多のエピソードを織り交ぜながら辿っていくものでした。時間内に予定の半分も進行しなかったようで、後半は後日またということに。ブラジルの大衆音楽の変遷のそれぞれの局面で重要な役割を演じてきたナラのことを2時間くらいで語り尽くせるはずがないので、それは良いことだと思います。

表題は、堀内さん所有のブラジルの雑誌のある記事のタイトルです。原題は、「Nara de uma bossa só」。このタイトル、すごく良いですね。僕は一発で気に入ってしまいました。これで1曲書けそうな感じがしてくるくらいです。もちろんこれはナラがボサノヴァしか歌わなかったという意味ではありません。その反対です。念のため。

それにしても堀内さんの雑誌のコレクションにはほとんど呆れてしまいました。「ボサノヴァの歴史」で紹介されていたあの記事この記事の原典の実物をご披露いただいて、引っ繰り返りそうになりました。いずれもだいたい50年前にブラジルで発行された雑誌です。どうしてそんなものを持っているんだろう??

あと、これを機会にセルジオ・カブラルのほかの著作も日本で紹介されるようになると嬉しいです。

良い夜でした。僕はこの本まだ読み掛けですが、しばらくはナラ・レオンを思いながら時間を過ごすことになりそうです。
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2010年01月11日

『ミーニャ・アルマ・カンタMinha Alma Canta』について

アントニオ・カルロス・ジョビンの『ミーニャ・アルマ・カンタMinha Alma Canta』がジョビン・ビスコイト・フィーノから再発売されています。このアルバムについては書籍でもブログでも紹介したことがなかったので、この機会に触れておこうと思います。

アルミール・シェヂアックのルミアール社から発売されていた『ソングブック』シリーズに、トム・ジョビンは積極的に参加していました。ノエル・ホーザ、ヴィニシウス・ヂ・モライス、カルロス・リラ、ドリヴァル・カイミ、エドゥ・ロボ、アリ・バホーゾ。1991〜94年に録音されたすべての『ソングブック』に参加しています。おそらくシェヂアックのこの企画の意図に大いに賛同していたのでしょう。シェヂアックにとってトムが最高の理解者だった様子が窺えます。もちろんそれ以前にトムにとってシェヂアックは最良の理解者であったわけですが。

それぞれのアルバムに1曲ないしは2曲収録されていたトム・ジョビンの演奏を1枚にまとめて発売されたのがこの『ミーニャ・アルマ・カンタMinha Alma Canta』でした。最初の発売は1997年だったと思います。それまで各アルバムにばらばらに収められていたトムの演奏が1枚で聴けるようになったので、ジョビン・マニアの間では重宝されていたアルバムでした。それが2009年になってジョビン・ビスコイト・フィーノから再発売されたというわけです。

1曲目はアリ・バホーゾの「ナ・バトゥカーダ・ダ・ヴィーダNa batucada da vida」(アリ・バホーゾの『Vol.1』に収録)。バンダ・ノヴァの演奏陣をバックにトムがピアノを弾きながら歌っています。一説にはトムのラスト・レコーディングとも言われている重要なトラックです(異説もあります)。この曲、『エリス&トム』の録音場面を収録した映像の中でトムが歌い出す場面があります。トムの長年のお気に入りだったのでしょう。

2曲目はノエル・ホーザの「トレス・アピトスTrês apitos」。バンダ・ノヴァをバックにトムがピアノを弾き語り、最後に女性コーラスが入ります。

続いてはエドゥ・ロボとシコ・ブアルキの「ショーロ・バンヂードChoro Bandido」(エドゥ・ロボの『Vol.1』に収録)。シコが歌っていて、トムもところどころ歌いながらピアノを弾いています。チェロの重奏が美しい。貴重なトラックです。

続いてのノエル・ホーザの「ジョアン・ニンゲンJoão Ninguém」は再びバンダ・ノヴァのバンドとコーラスをバックにトムがピアノを弾いて歌います。この曲の数ある演奏の中でもベストに挙げたい愛のある演奏です。

5曲目、トムとヴィニシウスの「ジャネラス・アベルタスJanelas abertas」(ヴィニシウスの『Vol.3』に収録)は、ガル・コスタのヴォーカルで、トムはピアノを弾いています。ガルは彼女にしては抑えて歌っています。間奏のトムのピアノにヴィニシウスへの想いが溢れています。

6曲目、カルロス・リラとヴィニシウスの「カリオカのサンバSamba do Carioca」(カルロス・リラに収録)はバンダ・ノヴァの楽しい演奏。そう言えばトムはこの曲を『カンタ・ヴィニシウス』でも歌っていました。

7曲目はアリ・バホーゾの「プラ・マシュカル・メウ・コラサォンPra machucar meu coração」(アリ・バホーゾの『Vol.2』に収録)。エドゥ・ロボが歌い、トムがピアノを弾きます。トムにとっては『ゲッツ/ジルベルト』から30年目の再録音ということになります。美しい演奏です。

8曲目はトムとヴィニシウスの「想いあふれてChega de saudade」(ヴィニシウスの『Vol.1』に収録)。バンダ・ノヴァの演奏で、アレンジは『イネーヂト』などと同じだと思いますが、このトラックはここでしか聴けないヴァージョンです。

9曲目のエドゥ・ロボとシコ・ブアルキの「ヴァルサ・ブラジレイラValsa brasileira」(エドゥの『Vol.1』に収録)はレイラ・ピニェイロが歌っています。トムはピアノ。なお、ブックレットには次の10曲目にもレイラ・ピニェイロの名前が書かれているのですが、これは誤植で、レイラが歌っているのはこの曲だけです。

10曲目はドリヴァル・カイミの「奇跡Milagre」(カイミの『Vol.1』に収録)。バンダ・ノヴァのまとまった演奏です。

11曲目はトムとヴィニシウスの「あなたなしでSem você」(ヴィニシウスの『Vol.3』に収録)。再びシコの歌で、トムはピアノです。説明不要。ここまで聴いてくると胸が一杯になってくる感じです。

12曲目、トムとヴィニシウスの「生涯かけてPor toda a minha vida」(ヴィニシウスの『Vol.3』に収録)はパウラ・モレンバウムの歌。チェロはジャキスで、『エリス&トム』でのヴァージョンを彷彿とさせるアレンジです。この曲、オリジナルのヴィニシウスのソングブックではジャキスとパウラの名前で収録されていて、トムがピアノで加わっているのは最初は発見できなかったものです。

13曲目はガルの歌で、トム=ヴィンの「さよならを言わなきゃならないÉ preciso dizer adeus」(ヴィニシウスの『Vol.3』に収録)。ピアノの音に独特の響きがあります。

最後はドリヴァル・カイミの「オ・ベン・ド・マルO bem do mar」(カイミの『Vol.3』に収録)。アナの歌にトムがピアノを付けながらハーモニーを歌っています。カイミも亡くなってしまった今となっては、本当にしんみりとしてしまう1曲です。このアルバムの唯一の欠点は、最後のこの曲が哀し過ぎることかもしれません。

トム・ジョビンのファンでいることのいちばんの淋しさは、新譜を聴くことができないことにあるのですが、そういう意味ではこのアルバムは普段ほとんど聴かれていない演奏を集めたものなので、未聴の方には絶好の贈り物になることと思います。編集盤ではありますが、上記のような意図で録音された演奏で構成されているので、全体の印象は非常に統一感があります。

なお、アルバムのタイトルはもちろんあの超有名曲の歌い出しの部分ですが、あの曲はトムのオリジナルですから、このアルバムには収録されていません。トムの愛唱曲を集めたという意味でこのタイトルが付けられているわけですが、聴き方によっては全体があの曲と同じく『リオ讃歌』のような仕上がりにもなっています。おそらくその意図もあるのでしょう。今さらながらアルミール・シェヂアックの丁寧な仕事に感心させられます。謹んで哀悼を捧げます。

2010年01月03日

今日聴いたジョビン・ソングブック(33)


*明けましておめでとうございます。ここのところすっかりさぼり癖が付いてしまったこのブログですが、今年もぼちぼち書いていきます。宜しくお願いします。

*ある先輩から、「君のブログは全然面白くないが、ジョビンのソングブックの紹介だけは世界に例のない貴重なものだから、それだけはこれからも頑張りなさい」と助言をいただきました。はい! 頑張ります!

フレッド・ハーシュ・プレイズ・ジョビン
フレッド・ハーシュ
Fred Hersch
Fred Hersch Plays Jobim
2009?
中堅ジャズピアニストのフレッド・ハーシュのソロ・ピアノ。クラシック畑の仕事もあるピアニストで、ハーモニーもアレンジもユニークで飽きない。中でも「オ・グランヂ・アモール」の解体ぶりは見事。ブラジル音楽はエヂソン・マシャードに教わったと本人がライナーに書いている。
4

ザット・ガール・フロム・イパネマ
ロヴィーサ
Lovisa
That Girl from Ipanema
2008?
スウェーデンの女性歌手によるジャズ・ボッサ集。15曲中9曲がジョビン曲。あまりにも当たり前の料理で、可も不可もない。
3

ボサノバ・イン・ザ・トワイライト アントニオ・カルロス・ジョビン作品集
フェビアン・レザ・パネ
Febian Reza Pane
Bossa Nova in the Twilight
1987
日本製作盤。アルファレコードのネオ・シック・シリーズという企画の1枚。ピアノ・トリオ+ギター+フルートをベースにした演奏。10曲中7曲がジョビン曲。アレンジはまとまっているが、聴きどころは少ない。オリジナル曲の方が好印象だったりする。
3

ボサノヴァに乾杯!
ハリー・アレン
Harry Allen
Viva! Bossa Nova
2008
このテナーサックス奏者はボサノヴァを理解していない。リズムがひどいし(アクセントが違うんだってば)、アドリブがひどい。こういう演奏がモダンジャズの世界では評価されているのだろうか? 13曲中7曲がジョビン曲。
1.5

*この話、したっけ?(©青山南さん)
ネルソン・マンデラの娘の一人は、名前をジンジというのです。以前に声明を読んだりしていたあの娘です。生まれは1960年。綴りこそ違うのですが(本名:Zindziswa、愛称:Zindzi)、すべてのことがつながっている感じがします。